We Like Us
Chris Killip, Jim Mangan, Katsumi Watanabe, Karlheinz Weinberger and Frank in Rock’n’Roll
Nonaka-Hill 京都は、4月12日 - 5月31日まで、クリス・キリップ、ジム・マンガン、渡辺克己、 カールハインツ・ワインバーガーによる4 人の写真家と、私的なファウンドフォトアルバム、「フランクのロックン・ロール」の展示「We Like Us」を開催いたします。
どのようなコミュニティにも共通する本能のようなものがあります。それは、自分たちの世界を守り、外の存在には慎重に距離を保とうとする感覚です。本展に参加する写真家たちは、それぞれが主流社会との間に緊張関係を抱えながら生きる人々に目を向けてきました。社会の周縁に位置する人々、取り残された人々、あるいは容赦のない自然と密接に関わりながら暮らす人々。写真家たちは、時間をかけ、細やかな気遣いと静かな距離感をもって彼らに寄り添い、信頼関係を築いていきます。そして彼らの生き方や美意識、自己表現のあり方に深く惹かれていきます。そうして現れてくるのは、カメラに心を開いたコミュニティの姿です。スペクタクルとしてではなく、静かな相互理解のもとに撮られたポートレート。それらの写真には、同じ時間をともに過ごし、丁寧な関係を築くことで可能となった、ある種の親密さが映し出されています。
展覧会タイトルの「We Like Us(私たちは私たちが好き)」は、最近のアメリカ英語における代名詞の変化する感覚に対するちょっとした遊び心から生まれました。文法的には “We like ourselves(私たちは自分たちを好き)” の方が正しいかもしれませんが、ここで描かれているグループの空気感には、どこか異なる響きがあります。それは、気負いのない肯定、「このままの私たちでいい」「今の私たちで十分だ」という、さりげない自己受容の響が感じられます。このタイトルには、展示されている写真に流れる精神性、集団としての自己意識や帰属感、そして静かな誇りのようなものが自然と重なっているのです。カメラの存在は、被写体を「見られている」状態に置きつつも、同時にそのコミュニティの一体感や、特別な存在であるという意識を引き出しているように見えます。写真家とコミュニティーとの間に流れる、目に見えない信頼や連帯感が、静かに立ち上ってくるように見えるのです。レンズを通して浮かび上がるのは、壊れやすく、いままさに形を成しつつある静かなやりとり、それは、まだ手探りの信頼と「ただ、恐れずに見つめられたい」というささやかな願いから生まれているのかもしれません。
本展では、クリス・キリップによる《Seacoal》(1976‒1984)、ジム・マンガンの《The Crick》、渡辺克己による《新宿群盗伝》(1965‒1973)、カールハインツ・ワインベルガーの《Halbstarke》、そしてフランクによる代々木公園ロカビリー・コミュニティのフォトアルバムから構成されています。それらはすべて写真という表現が、ある特定のコミュニティを記録しながら、他のコミュニティとの相互理解や共感を生み出す力を持っていること、そして未来の世代のためにその姿を永く残すことができるという可能性を示しています。
また、同時期に京都市内では京都国際写真祭「Kyotograpie」が開催されております。詳細はKyotograpie.jpをご覧ください。